Umwelt

Textiles & Objects

Love will tear us apart

ノルウェー出身のスサンナ & ザ・マジカル・オーケストラによる、ジョイ・ディヴィジョンのカバー曲です。

逆光気味の光源によるコントラストは映像に深い余韻を残し、透明感のあるヴォーカルと最小限のキーボードの音色とともに、繊細で静謐な印象を与えます。

陰鬱な詩の世界を表現したというよりも、北欧の澄み渡った深い海の底のような、もしくは凍てついた大地の氷のような、喩えるならそんな純度の高さ。数十を超えるミュージシャンがこの曲をカバーしていますが、そのなかでも秀逸ではないかと。。。

原曲のジョイ・ディヴィジョンの方は、機械的なビート、硬質なギター、そしてイアン・カーティスによる低い呻くようなボーカルと激しい痙攣のダンスを特徴とする演奏スタイル(実は、その痙攣はパフォーマンスだけではなく、彼を日常的に悩ませる原因不明の発作でもあったわけですが)、それでも両者は「純度」という意味において通底しているように思われるのです。

六年程前に京都みなみ会館のレイト・ショーで映画《コントロール》を観て以来、それまでよりもイアン・カーティスを少し身近に感じられるようになりました。二十三歳でこの世を去った音楽好きの早熟な文学青年は、世界を、そして自己という存在をどのように捉えていたのでしょうか。

ジョイ・ディヴィジョンを聴きながら、イアン・カーティスが心酔していた作家である J・G・バラードやウィリアム・バロウズの書物を読み耽り、彼の全身を硬直させる精神の高ぶりと、その研ぎ澄まされた創作行為に想いを馳せてみたいとも思います。