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Textiles & Objects

TSUTSUI ‘ S STANDARD

知人に教えてもらい、最近購入した本です。『TSUTSUI ‘ S  STANDARD』。

1960年代後半〜80年代にかけて、筒井喜久恵さんによって作られた三人のお子さんのための服のうち92点が収録されています。

この本ができたきっかけは、筒井さんが以前自宅で、長年保管していた自作子ども服の展覧会を開かれたことにあるようです。

掲載されている子ども服は、どれもが印象に残る色遣いとデザインです。はっとするほど愛らしく、ページを繰るたびにわたしは目を奪われました。服を着たときの三姉弟の写真も随所にちりばめられており、それにまつわる家族のほほえましいエピソードを読むのも楽しい!

写真がこんなに素敵なのですから、実物を見て「その子ども服を押し入れの奥に眠らせておいてはいけないと思った」方たちが、本の出版に尽力されたというのも納得です。

筒井さんが子ども服を作られていた当時は、欧米の文化がどんどん紹介されるようになり、「見るものすべてが刺激と活気に満ちあふれていた時代」。そういった新鮮な空気が一着一着の服に吹き込まれ、子どもたちの身を包んだ後も大切に仕舞われていた事実を思うと、筒井さんの服がもう単なる「もの」ではなくなっていることに気付かされます。

実は、この本をすすめてくれた知人も古物商です。その彼から「自分の古道具に込める想いが重なる一冊」と素敵な紹介をしていただいたおかげで、知ることができた本でした(本を作られたのは彼の友人とのことです)。出版にいたるまでにかかった三年あまりの月日と、筒井さん一家の思い出のつまった何十年もの時間に敬意を表します。