Umwelt

Textiles & Objects

SF ( SUKOSHI FUSHIGI )

写真は小さい頃に読んでいた藤子不二雄先生の作品「値ぶみカメラ」(藤子・F・不二雄『SF短編PERFECT版⑦[タイムカメラ]』)。未来から来たセールスマンが不思議なカメラを売り歩くシリーズのひとつです。

主人公の竹子は、骨董書画・古色堂の一人娘。カメラマンを目指す彼女は、ある日あらゆるものの価値を数値化するカメラを手に入れます。

藤子先生の作品に登場する「すこし・不思議」な道具の数々は、当時はまるで夢のように思われたものでしたが、気が付けばすでに実現されているものも少なくないような。。。

とはいえ、このカメラの真の凄さは、竹子がふたりの男性にプロポーズされて心底困ったときに、結婚相手として本当に相応しいほうがどちらかという価値を計算できてしまうところにありました。まさに予想を裏切る未来道具!

ところが結局、彼女の同僚の冴えないカメラマンの価値(「自価」とあらわされる被写体の自分にとっての価値)は、お金持ちの男性よりも金額の桁が大きすぎて(逆説的に、お金では測れないものとして)、未来のテクノロジーをもってしても表示することが不可能だったと表現されています。

インターネットへのアクセスを通じて、ものの相場を瞬時に検索することがほとんど可能となった現代であるからこそ、この作品を読み返すととても新鮮に感じます。同様に、他の藤子作品もいま読むとあらたな発見があり、面白くてやめられなくなります。

そして、この作品から読み取ることのできる、その人にとっての「主観的な価値」を大切にする考え方は、Umwelt の姿勢とも共通していると考えています。