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Textiles & Objects

Lois Dodd: Framing the Ephemeral

先月のオランダ滞在中、デン・ハーグ市美術館で観た Lois Dodd(ロイス・ドッド)による絵画の大規模な回顧展 Lois Dodd: Framing the Ephemeral は、記憶に深く残るものでした。

During my time in the Netherlands last month, I visited the Kunstmuseum Den Haag to see the large-scale retrospective ‘Lois Dodd: Framing the Ephemeral.’ It left a deep and lasting impression on me.

まだ日本であまり馴染みがないだけでなく、ヨーロッパでの大規模な回顧展はこれが初めてというLois Dodd。1927年生まれで今もアメリカに暮らす98歳の彼女は50年以上にわたり、暮らしと創作活動の場に選んだメイン州中部海岸の田園地帯や出身地のニュージャージー州で自宅近くのDelaware Water Gap(デラウェア・ウォーター・ギャップ)といった身近な日常の風景を描き続けてきました。今も変わらず描くことが日課なのだそうです。

また、1952年からニューヨークで十年間運営されていた伝説的なギャラリー Tanager Gallery(タネジャー・ギャラリー)の創設メンバー5人のうちのひとりでもありました。そこが伝説的と語られるのは、彼女の作品発表の場だったと同時に、当時まだまだ新進気鋭の、例えばAlex Katz(アレックス・カッツ)やWillem de Kooning(ウィレム・デ・クーニング)といった今日のモダンアートを形作ってきた大勢のアーティストの作品を紹介するギャラリーでもあったからです。

スミソニアン博物館にはこのギャラリーにまつわるさまざまな記録 Tanager Gallery records が収蔵されていますが、これはすべて彼女の寄贈によるものです。

Rainy Window, 2011 (Left) Day Window-Red Curtain, 1972 (Right)

展示はおよそ120点、ほぼ風景画です。小品が多かったのもあり、ひとつひとつの作品の前で立ち止まっては距離を変えながら眺めるのが心地よく、時間を忘れて作品と対峙できる空間でした。

Day Window-Red Curtain, 1972 (detail)

途中から「帰りに図録を買おう」と決めて、写真を撮るよりも作品と実際に向き合う時間に集中したので、撮影したのは数点のみです。

Rainy Window,NYC, 2014

Sunlight on Floor + Door, 2013

Opening in Ice and Light on Path, 2002

写真をもとに描くことはなく、その場にイーゼルを置き描き上げるというLois Dodd。☝︎こちらの作品からは澄み切った空気が放たれているようでした。

Snow Patterns, 1985

入ってすぐに心を奪われた Snow Patterns、ここからもう釘付けでした。

展覧会のタイトル Framing the Ephemeral が示すように、風や光、情景の空気感といったその場かぎりの儚い一瞬が彼女の筆づかいによってキャンバスに切り取られ、とどまっているといった印象です。これまでに暮らしてきた自宅の窓から見たさまざまな風景もかなり特徴的に描かれているので、Framing には窓枠を連想する意図も込められていますね 🪟

ハーグ市美術館のミュージアムショップでは残念ながら売り切れだった図録(現在は再入荷されていると思います)は、版元のベルギーの出版社から取り寄せてようやく到着しました。ブックデザイナーの日下潤一さんに展覧会についてお伝えしたところ「ハーグ市美術館は建物も傑作です」と、後日絵葉書を送ってくださったので、図録と一緒に撮影。

わたしが訪れた日は雨だったので、またいつかお天気のいいときに足を運べたらと思います。

ウンベルトでは Lois Dodd: Framing the Ephemeral のポスターを展示販売いたします。お断りしておきますと、わたしがあげた写真の作品はどれもポスターになっていませんでした。

少数入荷ですので、ご興味がおありの方はお早めにご来店いただければ幸いです。