先日、宵山ゼミ「〈仮〉のダイナミズム」を聴講しました。
I attended the Open Seminar: Yoiyama Seminar organized by Hirata Akihisa Laboratory, Kyoto University. Guests: Aiko Tezuka (Artist), Tatsushi Fujihara (Associate Professor, Institute for Research in Humanities, Kyoto University)
はじまりは、敬愛するアーティスト、手塚愛子さんのレクチャーから。
美術大学に油画専攻で入学してからの葛藤、そして「全てを包み込む」作品づくりへと突き進むことになった流れと美術作家としての矜持、これまでの代表的な作品について丁寧に話してくださいました。そのなかには、オランダの Tilburg にあるTextile Museum内ラボでの作品づくりのお話も。

毛織物工場を改修してつくられたこのテキスタイル・ミュージアムについては以前訪れたとき、過去の記事ですこしご紹介したことがあります。ミュージアムショップで手塚さんの作品のポストカードを発見して、勝手に興奮してわーっと胸が熱くなった記憶がよみがえりました(今も大切にしています)。

お話によると、ラボで働いている人たちはとっても仲が良く、お昼はランチを持ち寄ってみんなで食べるのが日常なので、制作中は手塚さんもお弁当持参で一緒にお食事されていたそうです。
作品に心動かされるのはもちろんのこと、そうしてある意味普通の感覚で(今はベルリンと東京を拠点として)暮らしていらっしゃるところも含めていいなと今回改めて思いました。

そして、もう一人のゲストは藤原辰史先生でした。

手塚愛子さんのお話や作品にあったキーワード「織り直し」を受けつつ、歴史学者の視点から微生物による解体、分解、再構築について分かりやすく解説してくださいました。「人間は、微生物に集られている存在」と自覚すると、ものの見え方が変わってきそうです。

先生のご友人の漆職人さんによると、2011年の東日本大震災以降、金継ぎを習いたいという方が増えたとのこと。それは震災によって傷ついた心を治すように、欠けた器を継いで大切に使い続けたいと思う人が増えたのではないか、壊れたものを直すことの大切さに気づいたからでは、という推察もありました。金継ぎと心のリカバリーは、わたしにとって新しい視点でした。
手塚愛子さんは、作品づくりのなかでテキスタイルと歴史と時間に向き合い、細い経糸と緯糸に思いを込めている。藤原辰史先生は、歴史という堆積した大量の土砂の中から掬い出すように、表立っては見えにくいもの、過去に埋もれてしまったものに目を向けている。どちらも、儚い何かに着目し、それぞれの方法でダイナミックにわたしたちの眼前に提示してくださっていると思いました。
とても刺激を受けた宵山ゼミでした。