最近、『プラテーロとぼく』を読み返しています。初めて一人暮らしをするときに、実家の本棚から持ってきた愛着のある一冊です。
作者 Juan Ramón Jiménez(フアン・ラモン・ヒメネス/1881-1958)は、スペイン・アンダルシア地方の小さな町モゲール出身の詩人。
フアン・ラモンはモデルニスモ(モダニズム、近代化運動)まっただなかの首都マドリードに出て、活発に詩集を発表します。しかし父の死のショックなどから療養が必要となり、サナトリウムへ。退院後は故郷モゲールに帰ってきます。
そして再びマドリードに向かうまでの7年ほどのあいだ、田園風景がひろがる故郷に身を委ね、静かに詩作に没頭した彼の心象風景を散文詩で表現したのが『プラテーロとぼく』です。
ロバのプラテーロへの優しい語りかけとともに、瑞々しい言葉で紡がれたアンダルシア地方の春夏秋冬にわたるさまざまな風景は、まだ見ぬ地への想像を掻き立ててくれます。
わたしが特にすきな、炎の一節。季節は冬です。
プラテーロ!火はなんて美しいのだろうね!ごらん、アリーが、ほとんどからだを焦がしそうにして、生きいきした目をいっぱい開き、火を見つめているよ。なんと楽しいこと!ぼくたちは、金の踊りと影の踊りにつつまれている。家ぜんたいが踊っている。ロシアのコサック踊りのように、自由自在に大きくなったり、小さくなったりする。枝と鳥、ライオンと水、山とばら、というように、あらゆる形が、無限の妖術となって、火から現われ出る。ごらん、ぼくたち自身も、いつのまにか、壁で、床で、天井で踊っているよ。