Umwelt

Textiles & Objects

I’ll Never Fall In Love Again

Stormen Otto er drevet over. 昨日、デンマークで今年初めてという大きな嵐(Ottoという名前)が吹き荒れたあとの静かな朝。旅にアクシデントはつきものですね。

買い付け旅、粛々とすすめております。

続・旅の音楽コーナーは、バート・バカラック作品との個人的な(何度目かの)出会い、そして1990年代の時代背景について些細なことを書いています。ついつい長くなってしまいました(読み飛ばしていただいて構いませんので)。


バート・バカラックという名前を聞くだけで、そこになにか特別な響きを感じるし、ちょっと幸せな気分にもなります。

「What the World Needs Now Is Love」「Raindrops Keep Fallin’ On My Head」など、これまで何度かバカラック作品のカバーをご紹介してきました(幸宏さんも含め)。今回は「I’ll Never Fall In Love Again」を、有名なディオンヌ・ワーウィックとは別のもので。

本文中のジャケットとは違います、念のため。

1997年に買ったコンピレーション・アルバムを聴いて、このボビー・ジェントリーによるカバーを初めて知りました。なぜそこまで憶えているかというと、ジャケットが素朴なムード音楽/イージー・リスニングかと見紛うばかりのぎりぎりのデザイン(もっと言うとワゴンで売ってる低価格・廉価版CDみたい)だったため、その選曲の良さとのギャップに意表を突かれたのでした。

1967年公開の映画『カジノ・ロワイヤル』に改めて注目が集まってしばらくしたころ、60年代的(ソフトロック、ラウンジ、あるいはモンド・ミュージックのような視点)で、洒脱なデザインのバカラック・コンピにハズレなし(見かけたら即買う)。そして例のコンピの発売と同年に『オースティン・パワーズ』が公開されたとき、バカラックが出演(次回作ではコステロとも共演)していたのにも驚かされました。世界中でバカラック・ブームが再燃していたのです。

それなのにそのコンピは、帽子をかぶった女性が車のなかからただ澄ましているだけ。

でもそれこそが、一時の流行とは無縁の本来あるべき姿かもしれないし、だから目立っていたとも言えるので、デザインとして優れていたのかもしれません。

そのコンピを見つけた場所が近所の本屋さんの小さなCDコーナーだったこともあってか、当時はそこまで思い至らずでした。もちろん正規版なのでワゴン内ではなかったものの、かなり悩んだ記憶があります。「これを買っていいのかな、わたし…」と、自問自答を繰り返しました。わたしの優柔不断な性格は実はむかしから変わっていません。

結局は、いま買わないともう二度と出会わないかもしれないし、見方を変えれば、ちょっと高級感もあるデザインではないかと半信半疑の自分を説得し『Alfie〜バート・バカラック・ラヴ・ソングブック』を家に持ち帰ったのです。そしておそるおそる聴いてみると、これが大正解!アルバムを外見や周りの状況だけで判断してはだめですね。

時代と逆行しているかもしれませんが、古いものでもなんでも、迷ったら買う(所有する)ことでこれまでやってきています。でないと今回のカバー曲は(に限らず)、ジャケットも合わせて長く記憶に残っていないので選ばなかったはず。きっかけとしてYouTubeを観て気に入れば買って、サブスクはしません(アーティスト側にも決して良い条件ではないと聞きました)。

「Alfie」はバカラック自身がもっとも気に入っていた楽曲です。この旅の最後にご紹介する予定でいます。

R.I.P. Burt Bacharach