Umwelt

Textiles & Objects

Worn: A People’s History of Clothings

昨年末に出版された『織物の世界史』。

本書は、これまでスポットライトを当てられてきた「形作られた衣服の歴史」ではなく、帯にあるように、リネン、綿、絹といった代表的な布素材の歴史と現代のさまざまな問題点についての調査がまとめられています。

アメリカが担ってきた役割に重きを置いてはいるものの、世界各地にある織物の産地に足を運んだ筆者が実際に目にした様子は、旅行記のようによく伝わってきます。

「はじめに」で紹介されている、衣服とは「世界に対する私たちの見方と、私たちに対する世界の見方を変えてくれるもの」というヴァージニア・ウルフの言葉は、一本の切れない糸のように本書を通底しており、読者へ問いかけてきます(同様に『オーランドー』には、 “the clothes wear us and not we them”「衣服が私たちを着ているのであって、私たちが衣服を着ているのではない」ともあります)。

ひととおり読み終えた後、これから新しい服を選ぶ機会にどのように考えるのかを自分に問いかけています。Textile lover のみなさまにもじっくり読んでいただきたいと思いました。

地に足のついた織物の世界についての知識と「もっと想像力を働かせねば」という大切な指針を与えくれる一冊です。