Umwelt

Textiles & Objects

Self Portrait

正面に見えるのは、町内の一大行事、地蔵盆が終わって平静を取り戻したお地蔵さん。この町に暮らしてもう10年以上になりますが、地蔵盆という夏の行事を気に留めたことはこれまでほとんどありませんでした。

以前、大家さんから「昔(いま70代の大家さんが子どもだったころ)はその日のためにみんなで劇の練習をしていたのよ」とお聞きしたことがあったので、娯楽の少なかった時代は学芸会のような、お祭りのようなものだったんだろうなと漠然と想像していました。

ところが今年はわたしも参加しなければいけない理由ができて、先月からすこしずつ準備を始め、先週ようやく地蔵盆当日を迎えました。祠があるこの場所は、わたしの普段の通り道ではないのもあって、おなじ町内とはいえアウェー感満載です。

初対面の方々へのごあいさつと並行して行事はすすんでいきました。

驚いたのは、町内のみなさんがとても協力的で、てきぱきと役割分担をされ、テントの設営など(そして解体まで)があっというまに終わったことでした。子育て世代が多く、みなさんお忙しいだろうに、朝早くから集まってくださることが分かり、何もしてこなかった自分を恥ずかしく思いました。

植物のお手入れを欠かさない物静かなご近所さんが、ここ一番と采配をふるうという新たなお姿を垣間見たり、いままでは通りがかりにほんの会釈だけだった方と会話したりと、それだけでもわたしにとっていつもとちがう世界にいるような感覚でした。もしかすると、主役の子どもたちとおなじくらい楽しんでいたのかもしれません。

考えてみれば、その感覚は旅に出たときに感じるものとよく似ています。ただ圧倒的に違うところは、何かあればすぐ自宅に戻ればいいという安心感でした。

ショートトリップから日常に戻りましたが、これまでお付き合いのなかったお地蔵さんにもなんだか親しみを感じるようになりました。つぎの地蔵盆の開催を楽しみに待ちながら。