Umwelt

Textiles & Objects

Kaibutsu-kun

ウンベルトラボの棚から取り出した米沢嘉博『藤子不二雄論──FとAの方程式』。ファンでもなかなか知ることのない、二人の共同作業の内実が詳しく描かれています。

ここで「藤子不二雄」は、「白い藤子不二雄」と「黒い藤子不二雄」に二分されます。そして前者がマンガ表現を「記号的に純化し洗練」させ「効率良くしかも確実に語り尽くすスタイル」であるのに対して、後者は、以下のように指摘されています。

「一方、黒い藤子不二雄は、語るための方法を模索する。語られたストーリー、物語よりも、どう語るか、どう描くかを探っていく。興味と好奇の赴くままに、あらゆるものを採取し、解体し、変形し、コラージュしながらマンガという得体の知れないキメラを作り上げていこうとする。白い藤子不二雄が、原型(プロトタイプ)であるとしたら、黒い藤子不二雄はそのコアの部分を確保したが故に、どこまでも実験を繰り返すことができたのだ。時代に敏感に反応し、子供マンガの中に大人的なもの、趣味的なものを持ち込み、不条理、不道徳、復讐などといった「毒」を加えていったのはまちがいなく黒い藤子不二雄だった」。

幼いころにはそんな区別はしなかった(なかった)けれど、だんだんと「黒い藤子不二雄」の存在に気づき、その魅力に惹きつけられていったという経験をお持ちの方も多いかと思います。

藤子不二雄A先生のご冥福を心よりお祈りいたします。

モノクロアニメの『怪物くん』。作曲・編曲は筒美京平さん。エンディングはテンポが少し速く、映画評論家の淀川長治さんによるナレーションが入ります。

子どものころのわたしにとって、テレビアニメ『怪物くん』は夏休みの午前中の楽しみでした。