太秦天神川にある dddギャラリーにて開催中の展覧会 鳥海修「もじのうみ 水のような、空気のような活字」に行ってきました。
I visited the special exhibition ’Osamu Torinoumi Making Type: Like Water, Like Air’ in ddd gallery, Kyoto.
これまでに「ヒラギノ」や「游明朝体」を代表とする100あまりの書体をうみだされた鳥海修さん。書体設計士として40年以上にわたり、活字にたずさわってこられました。
この展覧会では、あまり耳なじみのない「書体設計士」という仕事の内容や設計(デザイン)された書体が実際どのように使われているかをとても身近に感じることができます。
鳥海さんの名字は、出身地の山形県にある鳥海山(ちょうかいさん)が由来のようです。そのふもとに広がる庄内平野をイメージした「原字」の展示がユニークです。
偶然ですが、鳥海山はウンベルトで手織りハンカチをお願いしている itori 大滝郁美さんの写真で、これまでに幾度となく雄大な美しい風景を拝見してきたので、なんだか懐かしい気さえしました。
活字をたくさん目にすると言えば、書籍。あの本もこの本も。書体によって文章のイメージが変わることをわたしたちは自然に感じ取っているように思います。
写真には写っていませんが、本の間に置かれたタブレットとスマートフォンで、街なかのさまざまな広告に使われている書体を捉えた映像も見ることができました。
一角に再現された鳥海さんの仕事場。書体を制作する会社「字游工房」をともに立ち上げられた鈴木勉さんの写真に目がひきつけられました。
わたしが鳥海さんのお仕事を知ったきっかけは、ブックデザイナーの日下潤一さんから「明朝体の教室」という連続講座(阿佐ヶ谷美術専門学校)についてうかがったことでした。
たとえば「ヒラギノ」は、依頼元の本社がある京都の地名「柊野」から名付けられたこと、また「游明朝体」は「字游工房」の「游」に由来するといった書体の名称も含めて、何気なく目にしてきた文字ひとつひとつが、ほぼ個人の手でつくり上げられたという事実にそこで初めて気づきました。
書籍や広告といった、わたしたちが日ごろ意識するような「ある程度まとまったかたち」のデザインではなく、その要素のひとつとしての書体デザイン。デザイナーというより職人に近い気がします。しかも鳥海さん(と字游工房)は、本文書体とよばれる基本的な情報伝達ツールに特化し、癖がなく読みやすい、まるで水や空気のような書体をつくり続けてきたそうです。
展覧会場にあった「展覧会のあとがきに寄せて」という鳥海さんの文章は必読です。