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Textiles & Objects

I ♥ Milton Glaser

イラストレーターでありアートディレクターでもある大好きなミルトン・グレイザー(20世紀でもっとも重要なデザイングループの一つ「プッシュピン・スタジオ」をシーモア・クワストらと設立)が脳卒中のため、先月6月26日に亡くなりました。享年91歳。

その日はグレイザーの誕生日でもありました。

誰もが知っているグレイザーの仕事といえば「I NY」 (I Love New York)のロゴでしょう。これは70年代当時、治安の悪かったニューヨークを観光で盛り上げようというキャンペーンでグレイザーに依頼されたもの。2001年のアメリカ同時多発テロの後には、ハートの左下を黒く焦がして「♥ NY MORE THAN EVER」 (I Love NY More Than Ever)という続編もつくられました。

1967年のボブ・ディランのアルバム『Bob Dylan’s Greatest Hits』に付いていたグレイザーによるポスター(写真、右ページ)も、みなさんどこかで目にしているのではないかと思います。

『MILTON GLASER GRAPHIC DESIGN』(The Overlook Press、1973年、第1版)の本人コメントによると、ディランのポスターは、美術家マルセル・デュシャンのポートレート(上の写真、左ページ)のシルエットを引用したものであり、そしてその特徴的な髪の毛については、グレイザーが好んだイスラム絵画の影響なのだそうです。
同年、グレイザーはサイモン& ガーファンクルのコンサート・ポスターも手掛けています。左側がそのラフスケッチ。フォントもグレイザーによるオリジナルの「ベビーファット」。
下の写真はスイスのグラフィックデザイン誌「グラフィス」の表紙を含む一連の作品。「ブルノーゼンの二つに引き裂かれたパレット」に合わせて、出版社も雑誌のロゴを分割する(GRA  P  HIS)ことに同意しました。
☝︎グレイザーによる便箋のデザイン。左は1930年代の美術品を扱う古美術商のためのもの。真ん中は友人のイラストレーターであるジャン=ミシェル・フォロン専用のもので線が斜めになっていますが、それはフォロンの文字がいつも右肩上がり(右)であったため!
ちなみにタイプライターで有名なオリベッティ社のためにフォロンが制作した絵本『LE MESSAGE』(上の写真)。
グレイザーによるオリベッティ社の広告のための作品(上の写真、左ページ)。ディテールはイタリア・ルネッサンス期の画家ピエロ・ディ・コジモにインスピレーションを受けたのだそうです。それにしても、グレイザーのドローイングはとても魅力的です。
実は若い頃グレイザーは、イタリアの画家ジョルジョ・モランディからエッチングを学んでいました。こうしたクロスハッチングの技法はモランディの影響によるものだとグレイザーは書いています。
ミルトン・グレイザー関連の書籍は古いものが多く、なかなか入手困難ですが、もし気になったら探してみてください。
Rest in peace. Milton Glaser