楽しみにしていた書籍が届きました。『映画プロップ・グラフィックス スクリーンの中の小道具たち』
ウェス・アンダーソン監督作品『グランド・ブダペスト・ホテル』や『犬ヶ島』など、数々の映画やテレビドラマのグラフィック・プロップを製作したデザイナー、アニー・アトキンズによって書かれた本の日本語版です。
グラフィック・プロップとは、映像作品に使われる様々な小道具のなかでも特に、文字および図像を中心としたものを指しています。そしてアニー・アトキンズはそういった小道具をつくりだすグラフィック・デザイナーです。
読み進めていくと、彼女がファンタジーの世界にたくさんの息吹をもたらしてきたことがよく分かります。
映像作品の舞台となる場所や時代背景に合わせて、参考資料を集め、その資料を元に、登場人物が使う細々としたもの(例えば手紙なら、切手、消印、手書きの文字など)から街の看板といったものまでありとあらゆるグラフィックをデザインするそうです。
参考資料を集める経緯が書き留められていて、蚤の市の話にはわたしも思いあたるふしが多々ありました。
正確な時代考証はもちろん大切だけれど、短い映像のなかの情報としては、ただ正確なだけが正解ではない、といったことに触れつつ、自分の失敗や映画やドラマづくりの難しさについても綴られています。
ヴァージニア・ウルフとヴィタ・サックヴィル=ウェストを描いた映画 チャーニャ・バトン監督『ヴィタ& ヴァージニア』のグラフィック・プロップもアニー・アトキンズの手によるものだったと初めて知りました。
もう一度、ゆっくり観なおしたいと思います。