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SUSPIRIA

ルカ・グァダニーノ監督の『サスペリア』を観てきました。
舞台を1977年の「分断」されたベルリンに変更し、ナチスのホロコーストで妻を亡くしたクレンペラー博士を加えることで、(閉塞的なオリジナル版とは違って)複雑で広がりのある作品に仕上がっています。
例えば、最初に失踪したパトリシアの所属するテロ・グループとマルコス・ダンス・カンパニー(魔女集団)の構造が似ていると心理療法士のクレンペラー博士が指摘していたように、精神分析のメカニズムが様々な場面で効果的に働くのは、こうした設定の変更があるからこそだと思います(細かく言うと、ユングの『転移の心理学』が置かれていたり、ラカンの講演に行くといった隣人による台詞まで出てきて一瞬ドキッとしました。もちろんジャック・ラカンが登場して話し始めるということはありません)。
鑑賞中はそこまで冷静だったわけではなく、始まって2、30分あたりの凄まじくグロテスクな描写(スージーのダンスに同期しながら、鏡張りの部屋にいるオルガの身に起こること)に実際に寒気を感じ、観にきたことをちょっと後悔していたのですが、それを耐えれば残りはなんとか大丈夫でした。あと一回は映画館で観るつもりです。

☝︎オリジナル版は、衣装やインテリアがとってもガーリィなのが好きなところです。このときのヒロインを務めたジェシカ・ハーパーは今回の『サスペリア』にも登場しています。