ウンベルトのお内裏さま。京都・大木平蔵によって明治時代に作られた立雛です。
現代ではこのような紙のお内裏さまを見かけることはあまりないと思います。
しかし、室町から江戸の寛永頃にかけて雛人形(の原型となった人形)は子どもの遊び道具だったために、ひなまつりが始められた当初も、このような立雛が主流だったようです。
有坂与太郎著『日本雛祭考』には
「雛遊」の存在価値が高まり、雛人形を対象として楽しむ者が斬次、小児より大人に移つて来たので、勢ひ簡素な立雛にては足らず、精緻な座雛の形式を切望するやうになつた
とあります。
とはいえ、立雛は「一部間には古風なものとして愛玩せられてゐた」(有坂與太郎著『郷土玩具種々相』)そうですので、主役の座を譲ってもなお作り続けられました。
きっとこのお内裏さまも、古に思いを馳せつつ子どもの幸せを願って作られ、大切に保存されて今にいたったのでしょう。これからも大事にせねば。
* 参考にした書籍は、ウンベルト店内「小さなあがたの森書房」にございます。