明治に作られた砥部焼の淡黄磁小鉢が多数入荷しました。まろやかな象牙色で、ひとつひとつ微妙に色の濃淡が異なり、うっすらと入った二本の胴紐がアクセントになっています。直径は四寸(約12cm) 。
実際に使用された様子はあまりなく、一客の見込みには紙ラベルが貼られていたので、正確な制作時期を知る手がかりとなりました。
器が包まれていた紙は、明治39年(1906年)の琉球新報でした。このような古い包装紙は当時の社会生活や文化を知る資料でもあり眺めていると面白いので、いつもしばらくは手元に置いています。
ラベルには、アメリカ・セントルイスで開かれた万国博覧会で淡黄磁が金杯を受賞したという表記があったので、その博覧会の開催年、そして新聞の日付とをあわせて考えると、器ができたのは1905年前後と分かりました。
博覧会の後、淡黄磁の輸出量は飛躍的に増えたようですので、この器も海外向けに作られたものなのかもしれません。明治の沖縄では静かに出番を待っていた小鉢たちですが、現代のわたしたちの暮らしにはすっと溶け込んで、これから活躍してくれることと思います。