Umwelt

Textiles & Objects

Umwelt

店名のUmwelt(ウンベルト)は、ベルリンで一九三四年に出版されたユクスキュル/クリサート『生物から見た世界』(原題は『動物と人間の環境世界への散歩』、副題は「見えない世界の絵本」)に出てくる概念に由来します(ドイツ語で umwelt は環境という意味もありますが、ここでは環世界と訳されています)。
詳しくは、ぜひ本書を手にとっていただきたいのですが、誤解を恐れずに単純化すると、生き物は客観的な環境に生きているのではなく、そこから主観的な「環世界(ウンベルト)」を切り出しているのであり、ユクスキュルのたとえるようにそれぞれがあたかもシャボン玉に包まれて生きている、ということになるでしょうか。今日の環境を考えるうえでも、主体が世界をつくりあげているという認識は非常に重要であることを、あとがきで訳者の日高敏隆氏は指摘しています。

また本書の魅力は、生き物(マダニ、ヤドカリ、カタツムリ、ウニ、ミツバチ、コクマルガラスなど)が、知覚と作用によってつくりだす環世界を、副題のとおり、豊富な挿絵とともに紹介しているところにもあります。

ウンベルトの違いは生物種に限ったことではなく、人間のあいだでも見られます。例えば、カシワの木にたまたま人間の顔に似たこぶがあったとしても、年老いたきこりは注意を払いません。しかし、幼い少女にとって、森とは地の精や小人が住む不思議に満ちあふれた場所なので、カシワの木が怒った顔で見つめると彼女は驚いてしまいます。

もちろんカシワの木は、キツネにとって、屋根のある安全なねぐらになったり、フクロウにとっては、力強い枝に守られた休息場所になったりもします。

Umwelt という店名には、それぞれのお客さまの環世界(ウンベルト)にとって大切な何かを発見していただけたらという思いを込めています。